全損(Total Loss)は、海上保険における最も重大な損害区分であり、現実全損(Actual Total Loss)と推定全損(Constructive Total Loss)に分類される。現実全損は貨物が物理的に完全滅失(沈没・焼失など)した場合に該当し、推定全損は貨物が残存するものの修復費用が保険価額を上回るなど経済的に回復不能と判断される場合に成立する。英国海上保険法(Marine Insurance Act 1906)第60条に基づき、被保険者は推定全損が生じたと判断したとき、保険者に対して委付通知(Notice of Abandonment)を行い、全損として保険金の全額支払いを請求できる。保険者がこれを承諾すれば残存物の所有権は保険者に移転する。コンテナ船の座礁・火災事故では、個々のコンテナ単位で全損・分損の判定が行われ、損害精算が複雑化することが多い。